がんとメトトキサレートとヒスチジン代謝の相互関係

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薬学
Histidine metabolism boosts cancer therapy
Clinical use of the anticancer drug methotrexate can be limited by its high toxicity. It emerges that a diet rich in the amino acid histidine increases the effe...

2018年にNatureで発表された論文のまとめです。

メトトキサレートについて

メトトキサレートの効果

プリン塩基や、チミジル酸の合成を阻害することで、核酸の合成が阻害され、細胞が増殖しにくくなります。

アミノ酸の合成も阻害します。

より詳しく

メトトキサレートは、葉酸拮抗薬です。

葉酸は、ビオチンやS-アデノシルメチオニンと同様に、生体内の炭素単体(生体物質に炭素を導入する役割を持つ物質)で、ビタミンB9とも呼ばれます。

葉酸は、細胞内でジヒドロ葉酸(DHF)となり、テトラヒドロ葉酸(THF)となります。THFからは様々な構造をとりますが、炭素単体として働くときは、ホルミル化されて、ホルミルTHFとなり、核酸やアミノ酸にホルミル基の形で炭素を渡します。

メトトキサレートは、DHFがTHFに代わる際に必要な、DHFレダクターゼを阻害します。
したがって、メトトキサレートの投与はTHFの枯渇を招き、THFの枯渇は核酸・アミノ酸の合成阻害を招き、結果として細胞増殖が阻害されます。

メトトキサレートの用途

自己免疫疾患の一種である関節リウマチで用いられるケースが多いようです。この場合はT細胞などの免疫細胞の増殖を抑えることが作用機序のようです。

細胞増殖を抑えられるなら、当然がんに対しても一定の効果は見込まれます。

しかしながらメトトキサレートは、副作用が強すぎるために長期投与することができません。

ヒスチジン代謝について

http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/amino_met.htm

ヒスチジンは上記の4段階の反応でグルタミン酸まで分解されます。

1段階目の反応はヒスチダーゼで、HALと呼ばれます。
4段階目の反応の酵素はホルムイミノグルタミン酸ホルムイミノトランスフェラーゼで、FTCDと呼ばれます。

この4段階目の反応で、THFが補酵素として利用され、ホルムイミノTHFに変換されています。(ここがこの論文のポイントになります。)

がんとメトトレキサートとヒスチジン代謝の相互関係について

本題に入ります。

メトトレキサートとヒスチジン代謝の関係

メトトレキサートは、THFを合成する酵素を阻害することで、THFを枯渇させます。

ヒスチジン代謝は、THFを利用することで、THFを枯渇させます。
実際に、1段階目の酵素であるHALの発現を抑制させると、ヒスチジン代謝が抑制され、THFの減少が抑制されたことも示されています。
(HAL↓ → ヒスチジン代謝↓ → THF↑)
さらに、HALの発現が上昇している白血病患者は、HALの発現が少ない患者に比べて生存率が高いこともデータベースから確認することができます。
(HAL↑ → ヒスチジン代謝↑ → THF↓ → 細胞増殖↓ → 白血病進行↓)

どちらも経路は違えど、THFを枯渇させるという現象は共通しています。
→ヒスチジン代謝を促進させれば、メトトレキサートの効果は増大するのではないか?

<実験>
腫瘍を持つマウスを用意し、通常よりも少ない量のメトトレキサートを投与した。そして、マウスにヒスチジンが豊富に含まれる食事を与えた。

<結果>
腫瘍形成は通常通り阻害された。

これによって、ヒスチジン代謝の促進は、メトトレキサートの作用を増大すると考えられます。

メトトレキサートの副作用の低減

驚くべきことに、低用量メトトレキサート+高ヒスチジン食マウスは、通常のメトトレキサート治療マウスよりも副作用の発現が減少していることがわかりました。

この副作用減少の作用機序はこの論文では示されていませんが、これはメトトレキサート治療に大きな光をもたらしそうです。

がん細胞でのみメトトレキサートの細胞毒性が高まる何かがあるのか、正常細胞でTHFの枯渇が何かによって和らげられたのか、ヒスチジン代謝率が細胞ごとに異なるのか、調べることはたくさんありそうです。

最初に述べた通り、メトトレキサートは関節リウマチにも使われる薬なので、この研究が進めばがん患者だけでなく、関節リウマチ患者にも朗報となりそうです。

まとめ

メトトレキサートはTHFの合成を阻害することで、細胞増殖を抑制する。

ヒスチジン代謝ではTHFが利用される。

メトトレキサートとヒスチジン代謝の促進は相乗効果を示す。

ヒスチジン代謝の促進によるTHFの枯渇はメトトレキサートの投与によるTHFの枯渇と違い、副作用が少ない。

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