レーニンジャーの新生化学:第5版 第6章:酵素

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レーニンジャーの新生化学

こんにちは!レーニンジャーの新生化学をまとめています。

第6章は酵素です。上巻は基礎的な内容が続きますが、知らないこともちょくちょく出てくるので、まだまだやる価値があるなぁと思います。

酵素の発見、酵素の作用機構

酵素はリボザイム(触媒活性を示すRNA)を除いてすべてタンパク質である。酵素が触媒する反応はある程度の類似性があるため、酵素の働きによって酵素の名称は分類される。

酵素は基質と複合体を形成して、活性化エネルギーを引き下げることで、反応速度を高める。

酵素が基質の反応の活性化エネルギーを減少できる理由は、
①基質を固定することで、正しい方向で分子同士が衝突する確率を高めるから。
②基質と水素結合などの弱い相互作用をすることで、溶媒和から基質を開放し、溶媒による反応の阻害を防いでいるから。
③酵素は、基質の遷移状態の時の構造と完全に相補的である。したがって遷移状態が通常よりも安定化しているから。

また、基質と酵素の相補性は、触媒作用の原因であると同時に、基質特異性の原因でもある。

例題

1.補因子、補酵素、補欠分子族、ホロ酵素、アポ酵素について説明せよ。

2.酵素が遷移状態ではなく、基質そのものと構造的に完全に相補的だと、活性化エネルギーはどうなるか。

答え

1.
補因子:酵素の活性化にとって必要な金属イオン、有機化合物などのすべてを包括する名称。
補酵素:補因子のうち、有機化合物を指す。
補欠分子族:補酵素のうち、酵素と常に強く結合、あるいは共有結合している分子のこと。
ホロ酵素:補因子と結合することで初めて活性を持つ酵素のこと。
アポ酵素:ホロ酵素のタンパク質部分のこと。

2.活性化エネルギーは増大する。基質そのものと相補的であると、遷移状態に移行するときにむしろ酵素は、基質にとって立体障害を発生させるものとなってしまう。これは、鍵と鍵穴モデルが基質酵素複合体を説明するのに最適なモデルではないことを表す。

酵素反応速度論による作用機構の研究

ミカエリスメンテン式は

Vo=Vmax[S]/(Km+[S])

である。(導出は省略)
Vo:生成物(P)の生成速度の初速度 
Vmax:初速度の固有の最大速度 ←すべての酵素が基質と結合しているときのVoを表す。
[S]:基質濃度 
Km:ミカエリス定数

VmaxとKmは実験的に容易に求められる。ミカエリスメンテン式の意義は、Voを[S]の関数として表せていることにある。
ミカエリスメンテン式の逆数をとると、1/Voを1/[S]の1次関数として扱える。1/Vo-1/[S] のグラフをラインウィーバー・バーグプロットという。

二つ以上の基質が存在するときの、酵素基質複合体の結合様式は、ランダム、順序、ピンポンの3つである。

阻害剤には可逆的阻害剤と、不可逆的阻害剤がある。
可逆的阻害剤の結合様式は、競合型、不競合型(uncompetitive inhibition)、混合型の3つであり、1/Vo-1/[S]のグラフを検討することでどの阻害様式かを判断できる。

阻害剤があるときのミカエリスメンテン式は

Vo=Vmax[S]/(αKm+α’[S])

であり、競合型の時はα’=1.0、不競合型の時はα=1.0となる。

不可逆的阻害剤は酵素と共有結合を形成するもののことをいう。自殺阻害剤は不可逆的阻害剤の一種である。自殺阻害剤とは、通常は活性の低い化合物で、酵素と普通に反応するが、生成物になった瞬間に酵素と不可逆的に結合できるようになる酵素阻害剤である。自殺阻害剤は単一の酵素にかなり特異的に働き、かつ通常は活性が低く副作用が非常に少ない。

例題

競合型、不競合型、混合型のラインウィーバー・バーグプロットは阻害剤の濃度を増やすとそれぞれどのように変化するか説明せよ。(切片と傾きについて説明せよ。)

答え

競合型:切片は不変で、傾きだけ大きくなる。
1/Vo-1/[S] のグラフの 1/Voの切片は、α’/Vmaxを表す。競合型においてα’=1.0であるから、Vmaxは不変なので、切片は不変となる。
傾きはαKm/Vmaxを表すので、競合型ではKmはαKmとなり、阻害剤が大きくなるにつれてαが大きくなる。すなわち傾きが大きくなる。

不競合型:切片は大きくなり、傾きは不変である。
不競合型ではα’は阻害剤が増えるにつれて大きくなるので、見かけのVmaxは小さくなり、切片は大きくなる。
傾きはα=1.0より不変である。

混合型:切片、傾きともに大きくなる。
混合型ではαもα’もともに阻害剤の濃度が増えると大きくなる。よって α’/Vmax も αKm/Vmax も大きくなるため、傾きも切片も大きくなる。

酵素反応の例

キモトリプシン、ヘキソキナーゼ、エノラーゼ、リゾチームに関してその反応機構についてまとめられている。

重要な内容だがここにそれぞれの反応機構を書く技術がないので割愛する。

ペニシリンはペプチドグリカン合成酵素阻害剤である。ペプチドグリカンは細菌の細胞壁の主要な構成成分で、ペニシリンを投与することで細胞壁がうまく作れず、浸透圧に耐え切れなくなって細菌が破裂する。
細菌はペニシリン対策としてβラクタマーゼを作り出した。βラクタマーゼはペニシリンが認識する酵素に類似しているが、ペニシリンはβラクタマーゼを不活化できず、逆にペニシリンが不活化されてしまう。
人類はこのβラクタマーゼに対抗するべくクラブラン酸を作り出した。クラブラン酸は自殺阻害剤で、βラクタマーゼを不可逆的に阻害できる。
このような人類と細菌の化学戦争は未来永劫続くらしい。

HIVはレトロウイルスである。レトロウイルスとは、RNAと逆転写酵素をもつウイルスである。HIVウイルスは、インテグラーゼによって宿主に侵入する。侵入すると逆転写酵素を用いてRNAから二本鎖DNAを合成し、このDNAが転写・翻訳されれば新しいRNAとポリタンパク質ができる。このポリタンパク質はHIVプロテアーゼによって切断されて、新たな逆転写酵素など必要な酵素たちが生成し、増殖が完了する。
HIVプロテアーゼ阻害剤はこのHIVプロテアーゼの基質となって、HIVの増殖サイクルを止める。

例題

1.キモトリプシンはセリンプロテアーゼであるが、SerのOH基は普通の条件では当然、水素を離すことはない。キモトリプシンはなぜSerのOH基を酸として利用できるのか、説明せよ。

2.ヘキソキナーゼの基質と生成物は何か。

3.リゾチームの基質は何か。また、リゾチームの触媒する反応はSn1かSn2か。

答え

1.キモトリプシンのSerは、この近傍にあるHisとAspとともに水素結合のネットワークを形成しているから。詳しく言うと、AspのCOO⁻のO⁻はHisのイミダゾール環のNHのHと水素結合しているせいで、イミダゾール環のもう一方のNのpKaが上昇し(δー性が上昇し)、SerのHと水素結合を形成する。したがってこのSerのHはpKaが減少してかなり抜けやすい状態になっているから。Ser、His、Aspをまとめて触媒三つ組アミノ酸残基もしくは触媒三残基という。

2.基質:β-D-グルコースとMg・ATP 生成物:グルコース-6-リン酸 とMg・ADP

3.基質:ペプチドグリカン(N-アセチルムラミン酸とN-アセチルグルコサミンの鎖)
反応:Sn2 ただし確定しているわけではなく、様々なデータとの論的整合性がSn1よりとれているだけである。

調節酵素

調節酵素とは、ある種の調節を受けて活性が上下する酵素である。体内には様々な代謝経路が存在するが、最初の反応の酵素はほとんどが調節酵素である。
最終生成物が、最初の反応の調節酵素に結合してその経路を止めることをフィードバック阻害という。
調節酵素はほとんどが他サブユニットタンパク質で、Vo-[S]グラフはミカエリスメンテン式に従わず、シグモイド曲線を示す。

タンパク質中のSer、Thr、Tryは調節タンパク質といい、よくリン酸化を受けて酵素の活性を調節する。どの調節タンパク質でもリン酸化しうるわけではなく、コンセンサス配列が存在する。

例題

1.低活性化を促す調節因子と、不競合型阻害剤や混合型阻害剤はどちらもアロステリックな位置に結合して酵素を低活性化するが、これらの違いは何なのか、説明せよ。

2.ヘテロトロピックな調節因子は低活性化か高活性化のどちらを促すかは予想できないが、ホモトロピックは予想できる。どちらになるか答えてその理由を説明せよ。

3.チモーゲンとは何か説明せよ。

答え

1.調節因子は、アロステリックな位置に結合した後、酵素のコンホメーション変化を誘導して基質の結合を抑制するが、阻害剤は必ずしもコンホメーション変化を起こさない。

2.高活性化を促す。ホモトロピックは、基質が調節因子となっていることを言う。低活性化を促すということは、コンホメーション変化によって基質が結合しづらくなることを意味する。もしホモトロピックで低活性化を促すなら、コンホメーション変化が起こった後すぐに基質が酵素から外れてしまい、酵素は基質が外れたので高活性化し、また基質が結合して低活性化を促すという無意味なサイクルが生まれてしまう。したがってホモトロピックな基質は酵素の高活性化を促す。

3.プロテアーゼの前駆体で、ある個所が切断されて、コンホメーションが変化して、初めて活性を得るもの。キモトリプシノーゲンなどが挙げられる。

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